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分譲マンションにおける外国人居住に関する調査

まち居住研究会では、1996年と1998年に大久保地域の分譲マンションにおける外国人居住の実態調査を行いました。1996年は、地域内のすべての分譲マンション について、外国人居住の状況や管理組合の対応などを調査しました。1998年は、 外国人居住に関する管理組合の対応に的を絞った調査を行っています。ここで は、自身もマンション管理組合役員を務めるメンバー・金沢祐吉さんの報告をも とに、1998年調査の結果を紹介します。

 
●●調査の背景●●

何故、分譲マンションにおける外国人居住が問題となるのでしょうか? 大久保のように

都心部にある分譲マンションでは、区分所有者が自分では住まずに 他人に貸している

(転貸)事例がたくさんあります。アパートや賃貸マンションの場合は、 家主さんが一人

なので自分の考えに基づいて入居者を選んだり管理をすることが できます。しかし分

譲マンションの場合は、例えば50世帯のマンションで転貸している 区分所有者が30人

いれば、ひとつのマンションの中に30人の家主さんが存在すること になります。それぞ

れの家主さんが、別々に仲介業者を通じて人に貸すので、 マンション全体として同じ基

準で入居者を選ぶことができません。中には、無責任な 区分所有者や仲介業者もいる

ので、集合住宅での共同生活のルールを知らない人 や守れない人が入居することも

あります。「分別ゴミを守らない」「夜間の生活騒音が ひどい」「いつのまにか居住者が

入れ替わっている」「住宅として貸したはずなのに店舗と して使っている」などなど…。

これらのトラブルは、もちろん日本人・外国人の別なく 起こり得ることです。とはいえ来

日したばかりの外国人の場合は、日本人にとっては 常識でも、やはり教えてもらわな

いと理解できないこともあります。それをきちんと伝達 する義務は、本来仲介業者や転

貸している家主さんにありますが、そこのところが 不徹底なためにトラブルが発生し問

題となるマンションが出てくるのです。


なお近年大久保では、外国人にも日本の生活習慣がだいぶ周知され、トラブルは 以前

に比べれば減少傾向にあるようです。

 
●●調査結果の概要●●

1 . 調査の目的

  分譲マンションにおける外国人居住に関し、分譲マンション管理組合としての

考え方、対応状況等その実態を把握し、グローバル化が進む今日において、

外国人とよりよい関係を築きながら、良好な住環境を確保するための方策の資とする。

2. 調査の方法

  外国登録者数が多い新宿区大久保およびその周辺地域で、分譲マンション

外国人居住研究会が1994年12月から1995年3月までに行った調査資料*を参考に、

管理員がいる分譲マンションを対象とした。管理組合役員を対象に調査票への記入を

依頼しヒアリングも行ったが、実際には、管理員や管理会社が調査票に記入した例が

過半数を占めた。

 

  調査実施期間:1998年8~9月
  調査対象:調査対象マンション=32棟(うち非協力=2棟)
       内訳 大久保1~2丁目=27棟
          百人町1~2丁目= 3棟
          北新宿1丁目=   2棟
  回答者 :管理組合役員=14棟(うちヒアリング=8棟)
       管理員=   12棟
       管理会社=   4棟

3. 調査結果

3-1. 外国人の居住状況
  外国人入居戸数=272戸(全30棟1695戸の16%に該当)
   *国籍別/韓国=   122戸
        中国・台湾= 71戸
        その他=   18戸
        不明=    61戸


3-2. 外国人入居に対する考え方
  外国人の入居を無条件に認めているマンションは5棟、条件を付きのマンションが

  13棟、 入居させないという回答は1棟であった。


3-3. 外国人入居者への管理内容・遵守事項の伝達(複数回答)

  新しく入居した外国人へ生活ルールなどの説明を誰がするのかという設問に対しては、

「管理員(14棟)」「仲介業者(12棟)」という回答が多く、「管理組合役員(3棟)」

「賃貸者=転貸している区分所有者」は2棟、説明しないというマンションも2棟あった。


3-4. 外国人居住者に関する管理組合としての問題(複数回答)

  最も問題点として多くあげられたのは「ゴミの出し方(25棟)」である。

その他に、1/3以上のマンションで問題として指摘したのは「夜友人と騒ぐ(17棟)」

  「友人と同居(17棟)」「ゴミ・タバコのポイ捨て(16棟)」「共用部分の使い方(15棟)」

  「他人に又貸し(15棟)」「無断退居(13棟)」「無断入居(12棟)」「その他の騒音(11棟)」

  「ペット飼育(11棟)」であった。また「特になし」というマンションは2棟だった。


3-5. 外国人居住者による問題発生の頻度
  問題発生の度合いを日本人入居者との比較で聞いた設問では、
  「日本人より多い」(18棟)、「日本人と同等」」(4棟)、「日本人より少ない」(2棟)

  という回答だった。日本人より外国人によるトラブルが多いと回答したマンションが

  半数以上あり、外国人入居者に対する生活ルールの伝達・周知がなかなかうまく

  いかない状況が推察される。


3 -6. これまでにとられた対応


  ○生活の指導・援助

  外国人の中には、日本語による会話はできても読み書きは苦手という人もあり、

生活ルールの 伝達・周知が困難な場合もある。管理組合として、これまでにとられた
対応を、以下に列挙する。

・繰り返し根気よく納得するまで説明する

・ゴミ袋に部屋番号の記入を義務づけ、ゴミの出し方を徹底指導する

・連絡書、掲示文を翻訳する

・韓国語、中国語版の規約類を作成する(2棟)

・連絡書など翻訳希望を調査する

・外国籍アドバイザーにより助言する

・騒音について注意するよう時間を制限する

・ゴミ置場のシャッターの開閉で使用時間を制限する

・ゴミの分別がわるい場合は管理員が分別する(2棟)

・理事長、管理員が徹底して指導しているので現在は問題がない(2棟)

○管理規約に対する義務違反者への対応

・問題発生の都度、即時本人に注意する(6棟)

・分別のわるいゴミは、当人を突き止めるまで内容を確認し、当人に注意する

・注意書を掲示する(2棟)

・管理員により注意しても聞かない場合は、関係する仲介業者、保証人、

  家主に注意する(5棟)

・規則に違反あるいは非協力の場合は、総会にはかり追徴金をとる

・ガス等使用料金を払わない場合は供給を止める

・自治会が不適応と判断した場合は、家主はその居住者を排除しなけれ

  ばならないことにしている

○入居の条件・入居時の対応

・管理組合の推薦不動産仲介業者を選定し、入居希望者を確認させ、不適応者を入居させない(5棟)

・管理組合により家主に対して、入居希望者をよく確認した上で入居させるよう要請する

・家主が入居希望者をよく確認した上で入居させる

・よくない(無責任な)仲介業者を排除した

3-6. 今後の対応

  上記以外に考えられる今後の対応として、他に以下のような回答があった。


・日本の生活習慣をよく知ってもらう

・家主の責任を明確にする

・賃貸をする場合の制限を明確にする

・管理員の役割を明確にする

・委員会活動により問題点を把握して改善していく

・管理組合役員の問題意識を高める

   ●●調査を担当した金沢さんからの感想と提言●●

今回の調査のねらいは、分譲マンション管理組合による外国人居住者への対応と今後

の方策を探ろうとするものでしたが、現実には、管理組合役員からの回答は半数以下

でした。管理組合役員は、本来業務多忙などもあり、管理会社・管理員まかせとなり、

マンション管理に対する問題意識が希薄に なっているマンションも多いようです。


外国人といってもいろいろな人がいますが、大久保は職安通りを挟んで 歌舞伎町に接

していることもあり、飲食サービス業などに従事する外国人の寮として マンションの一

室が使われることもあります。外国人居住者によるトラブルがたびたび起こるのは、日

本の生活習慣をよく知らず、言葉も不自由であることに 起因していることが多いのでは

と推察されます。


外国人が日本の生活習慣を理解することで、トラブルがなくなれば、相互のより価値あ

る異文化の交流が、さらに容易になるのではないでしょうか。

  管理組合としての今後の対応方策として、次のような提言をしたいと思います。

◎区分所有者の積極的参加

   区分所有者によるマンション管理に対する意識を高める必要がある。管理組合

   として広報を発行することは効果があると考えられる。

◎問題点の把握

   居住者の苦情・要望などが管理員等を通じて管理組合へ伝達されるしくみを

   つくり、管理組合として問題点を把握できるようにしておくことが必要である。

◎外国人居住者へ生活の指導・援助

   入居時には、住まい方のルールを管理員や管理組合役員からよく説明し、

   その後も理解してもらえるまで根気よく説明する努力が必要である。

   また生活ルールや使用細則事項の各国語版の整備や、新しい外国人入居者が

   疑問点を相談できるよう、窓口や助言者を設けておくとよい。

◎入居管理システムの整備

   マンション全体の入居者選定基準が統一できるように、良識ある不動産仲介業者を

   管理組合が選定し、賃貸をしている区分所有者に協力を求めることが考えられる。

◎管理規約違反者への対応

   規則違反者には、繰り返し根気よく注意するが、それでも改善されない場合には、

   管理規約の義務違反条項を整備し、最終的には規約で対応する。

◎改善事項の歯止め

   新たな改善を行う場合には、関連する管理規約、使用細則、業務要領、管理会社

   との契約書等も併せて改定し、明文化しておくことが必要である。

◎管理会社への委託業務の明確化

   管理組合は管理会社に対し、管理を委託したい業務内容について契約書に明記し、

   管理の徹底をはかる。